瑞樹の読書ログ

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論理と変化の物語 『教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 3時間目』※前巻までのネタバレあり

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画像引用元:版元ドットコム

 

本作品は2018年にKADOKAWAから出版されたライトノベル。著者はさがら総

 

あらすじ

 

この話は、くだらない塾講師の、そんなくだらない秋の物語だ。

さがら総.教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?3時間目【電子特典付き】(MF文庫J)(Kindleの位置No.125-126).株式会社KADOKAWA.Kindle版.

 

夏の合宿が終わり、季節は秋を迎える。9月のある日、TAX調布校の常勤である道源寺のデスクに手紙が置いてあるのが見つかる。その手紙のタイトルは、「センチメンタルマイハニー」。古典的なラブレターだ。道源寺は手紙は自分が書いたわけではないと主張する。手紙の文章そのものを否定するのは間違っているという考えから天神は道源寺をかばう。道源寺はこの手紙は教え子が自分あてに書いたものだと主張し、手紙の差出人の調査を天神に頼む。

 

 そんな中、天神は「手紙爆弾」というものを冬燕から聞く。講師あての悪口が書かれた文章を、受付前の目立つところに置くことだ。TAX府中校はこれを防ぐために講師が受付前に張り付くようになり、講師室が無人になったことで大規模カンニングにつながった。道源寺の机のラブレターは「手紙爆弾」と関係があるのか——

 

 

 

 

天神の変化

 

適度に楽しませ、適度に集中させるべき教室管理において、俺には十年近く培ってきたテクニックがある──などと。 高慢と偏見に満ちた戯言はもう言うまい。

さがら総.教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?3時間目【電子特典付き】(MF文庫J)(Kindleの位置No.804-806).株式会社KADOKAWA.Kindle版.

 

塾講師としての天神のあり方の変化が今巻ではみられる。1巻の時、情熱を失っていたころと比較すると明らかに成長がみられる。教室管理に自信を持ち、子供たちを受験に集中させることができていると自信を持っていた。それが彼の思い上がりであったことがわかり、子供たちの人格を尊重するようにしている。

 

天神の同僚、ロジカルマン

 

『規定の時間内に終わらぬ業務など、作業工程もしくは作業量のどちらかが誤っているに決まっている。上長がその責を負うべきだ』

さがら総.教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?3時間目【電子特典付き】(MF文庫J)(Kindleの位置No.1083-1084).株式会社KADOKAWA.Kindle版.

 

TAX府中校の元常勤講師にして、日本橋時代の天神の同僚、ロジカルマン。全巻では主に天神や冬燕など、彼をよく思っていない人から見た彼の評価が書かれていた。しかし、今巻では彼の異なる側面が描かれる。天神から見た彼は論理の化け物で、生徒を数字としてみている人物だ。しかし、彼の知人からの評価は大きく異なる。例えば調布校の非常勤講師にして室長の娘であるシャークは、彼を良い講師だと感じている。残業を嫌い、非常勤講師の時間外労働を認めないところが明らかになる。彼の論理に従い、彼自身も周囲に合わせず即帰宅している。天神は彼の論理を良くないと感じているが、それもまた天神の主観に過ぎないのかもしれない。

 

 

 

総評

 

塾講師の話が中心の巻であった。天神の先生としてのあり方に変化が見られる。二人のヒロインの個性がはっきりと出て、かわいらしいと素直に思える巻であった。天神と星花の関係性が大きく変わることが予想される次巻への期待が高まっている。