瑞樹の読書ログ

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反対ベクトルのミステリもの 『探偵が早すぎる (上)』レビュー

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画像引用元:版元ドットコム



あらすじ 高校生の一華は家政婦の橋田と二人暮らし、父・瑛の死に伴って、5兆円という莫大な資産を相続する。

本家の大陀羅(だいだら)一族はその遺産を狙い、一華を事故死に見せかけるため、いろいろなトリックを用い、殺害しようと試みる。

引用—Wikipedia

 

 本作品は2017年に講談社から出版されたライトノベル。著者は井上真偽。

 

プロローグ

「探偵の役割って、結局そういうことでしょう?事件の解決装置。でもそれは被害者には一つもありがたいことはなくて、その切れ味鋭い推理を喜べるのは、あくまで残された被害者や事件関係者たちだけ。」

引用—探偵が早すぎる (上)18頁

 

父親の死後、莫大な遺産を相続した十川一華。彼女は本家の大陀羅家の人々に命を狙われている。家政婦の橋田が、そんな彼女にある意見を出す。

 

殺害の証拠をつかみ、裁判に持ち込む。そうすることで大陀羅家の人々は、民法891条の相続人の欠陥事由によって、遺産の相続人から永久に排除される。橋田は古い知り合いの探偵に依頼しようとする。

 

その提案に対して一華は冒頭に記したように返答する。しかし、橋田はその探偵が事件を防止することが可能なのだという。橋田を信じた一華が依頼を決断し、プロローグが終わる。

 

早すぎる探偵とは?

 

「神のものは神に、カエサルの物はカエサルに。己が蒔いた種は己で刈り取るのが筋というものだろう。」

引用—探偵が早すぎる (上)74頁

 

大陀羅家の人々や、彼らに依頼された犯人の視点で本編は描かれる。彼らは事故死に見せかけて一華を殺す計画を立て、実行に移そうとする。すると突然、彼らに声がかけられる。

 

殺人計画の内容を明かしていく謎の人物。その人こそが、橋田の旧知の探偵である。殺人罪で訴えるつもりか?と犯人に問われるが、彼はそんなつもりはないと返答する。その後に冒頭のセリフを発する。彼の目的は、犯罪を犯そうとした人物に、犯罪に用いられた手法を使ってお返しをすることなのだ。ミステリ小説で定番の探偵が犯人に対して事件のトリックを明かすことは、その過程に過ぎない。事件を阻止したうえで、犯罪のトリックを犯人に明かす。通常のミステリものとは順番が正反対である。この点こそが、この作品の面白さであり、他のミステリものとは一線を画す部分である。

 

下巻への引き

 

「さあ。狩り場 ですよ。お嬢様」

引用—探偵が早すぎる (上) 278頁

 

 父、瑛の四十九日の法要は、本家の旦那寺で執り行われる。一華と大陀羅家の人々が自然に接触可能な日で、来賓者も親戚筋に限定されている。大きな山場になることは明らかだ。その直前に、一華と橋田のもとに探偵がやってくる。探偵と話している橋田は興奮しているようで、普段は見せない笑顔で上記のセリフを言う。次の巻の内容が気になる引きで終わっている。

 

 

総評

 

従来の探偵ものとは異なり、事件が起きる前に防ぐ様はタイトルにふさわしいといえる。一方で、この事件を未然に防ぐ探偵、という要素以外は目新しいものがなく、事件の犯人が数多く登場するため、彼らに感情移入することが難しいと感じた。良くも悪くも、探偵が早すぎる、ということそれ自体に面白みを感じるかどうかによって評価が変わる作品だ。

 

四十九日の法要を迎える下巻では、どのようなストーリーが展開していくかが楽しみである。 

 

 

 

 

 

 

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)